司法書士・行政書士
今 野 智 喜
内容証明・裁判手続・相続登記
遺言
最近、就職活動の「就活」ならぬ、「終活」という造語があります。
自分の終末について考えるということです。その一番にあげられるのが「遺言(いごん・ゆいごん)」だと思います。遺言は法定の形式が決まっています。一般的な「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」の3つを紹介します。
※ 公正証書遺言と秘密証書遺言についての細かい手続きや必要書類については公証人役場に直接お尋ねください。
自筆証書遺言
自筆証書遺言というのは、自分で書いた遺言書ということです。
内容については、財産分けのことだけでなく、お墓を守っていく人を決めたり、遺言執行者(遺言書どおりに手続をしてくれる人)を指定したり、「みんな仲良く暮らしてください」みたいなことを書いても問題ありません(法的拘束力はありません)。
ポイントは以下の通りです。
1 全部自筆で書く。
(平成31年1月13日以降の遺言については、財産目録のみ自筆でなくても良くなりました)
2 書いた年月日をキチッと書く。
3 名前を書いて、押印をする〔花押(サイン)ではダメであるという最高裁判決が出ました〕。
4 封筒などに入れて封をする。封のところに押印することもある。
5 封筒には「遺言書」と書いて、自分の名前も書く。ここにも名前のところに押印しておく。
6 封筒には「家庭裁判所で検認するように」と書いておく。
4・5・6は法定事項ではありませんが(「検認」は必要です)、封筒に入れないでポロっと置いておくのも変なので、封筒などに入れて封をするのが普通だと思います。
自筆証書遺言のメリットは・・・
1 簡単にできて費用がかからない。
2 封筒などに入れて封印すれば、内容を知られることがない。
ということです。
逆にデメリットは・・・
1 内緒にしすぎると、見つけられないこともあり得る。
2 もし形式的に間違っていると効力が発生しないこともあり得る。
3 遺言者が死んだ後、家庭裁判所の「遺言書の検認」という手続が必要になる。
4 1通しかないので、保管していた相続人が無くしてしまったら遺言書通りに手続きできなくなる。
個人的にはデメリットの4が大変怖いと思っております。
※法務局による自筆証書遺言書の保管制度
令和2年7月10日から自筆証書遺言を法務局が保管する制度が始まりました。
法務局は内容はチェックしませんが、形式的なこと「ハンコがない」とか「日付けがない」とか
そういったことはチェックしてくれますので、上記のデメリットの2が、かなり減ります。
また、3の家裁の検認申立は不要となります。さらに、原本は法務局に保管され、遺言者死亡後は
法務局が発行する「遺言書の写し(遺言書情報)」を使って手続きをするため4のデメリットも
なくなります。ただし、法務局は内容そのものについてはアドバイス・相談等を受け付けないと
思いますのでご注意ください。
詳細は 法務局のサイト をご覧下さい。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人役場という場所に行き、公証人という方に遺言を作っていただく方式です。
手順としては・・・・
1 証人が2人必要(相続人になる人は不可)
2 遺言者が遺言の趣旨を公証人にお話しする
3 公証人が2を筆記し、遺言者と証人に読み聞かせ、または、閲覧させる
4 遺言者と証人が筆記が正しいことを確認したら署名押印をする
5 公証人も署名押印する
となっておりますが、実際はいきなり公証人役場に行っても、作ってもらえるわけではなく、何度か打ち合わせをして本番に臨むことになります。
メリットとしては・・・
1 公証人という専門家が必ず関与するので、形式に間違いがない
2 家庭裁判所の「検認」の手続が不要
3 原本が公証人役場に保管されるので、手元に渡されたを遺言書をなくしても、遺言書を再発行してもらえる
といったところでしょう。
逆にデメリットとしては・・・
1 証人を2人用意しなければならない
2 公証人に手数料がかかる
3 手続を専門家に依頼するとそちらにも報酬が発生する
が考えられます。
公証人という専門家が確認するため、費用がかかっても公正証書遺言にしておくことが良いと思っています。
※ 細かい手続きや必要書類については公証人役場に直接お尋ねください。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、公証人が関与するものの遺言の内容がわからないという方法の遺言です。
手順としては・・・
1 遺言者が遺言書に署名して押印すること
2 遺言者が遺言書を封筒に入れて、封をして遺言書に押したハンコで封印すること
3 遺言者が公証人役場に行き、公証人と証人2名の前に、封をした遺言書を提出して 自分の遺言であることと住所と氏名を申述すること
4 公証人が、遺言を提出した日および遺言者の申述を封筒に記載した後、遺言者および 証人が署名押印すること
内容が他人にわからないというメリットはあるのですが、デメリットとしては、
1 公証人の費用がかかる
2 証人が2名必要
3 公証人が関与するが、家庭裁判所の検認手続が必要
4 自筆証書遺言と同様、1通しか存在せず、紛失したら大変
※ 細かい手続きや必要書類については公証人役場に直接お尋ねください。
秘密証書遺言はほとんど使われていないようです。公証人役場まで行き、証人まで用意するなら2番目の公正証書遺言にする方がほとんどなのでしょう。
個人的にも、2番目の公正証書遺言にした方が良いと思っております。